「3年でデビューは難しい」現実を直視し、勉強した日々。最後には自分の”武器”をみつけられた。

参加者の声

トキワ荘プロジェクト卒業生のE.Wさんにインタビューしました。

漫画家を目指し、上京と同時にトキワ荘プロジェクトに参加したWさん。

シェアハウスに入居してすぐ、「3年でデビューするのは難しい」と気づいたという。

それでも現実に向き合い、トキワ荘プロジェクトに参加後3年間は勉強に費やすと決めます。

3年間の勉強のようすと、卒業間近にみつけた成長への突破口とは。

E.Wさん
トキワ荘PJ卒業生

── Wさんは地方ご出身でしたよね。上京するときに、不安はありましたか?

不安はありましたね。それまではあまり東京に行ったことがなくて、電車の使い方もよくわからないし、物価も高いと聞いていたので、漠然と「東京って怖いところだな」と思ってました。 

── そうだったんですね。

当時は東京に知り合いが全くいないという状態でした。 

── 不安ですよね…。上京後すぐに、シェアハウスに住んでみてどうでしたか。

情報をシェアできるのがよかったです。 

── 例えばどんな情報をシェアしたんですか…?

小さいことで言えば、駅から家までの明るい道を教えてもらったり。 

あとは、入居当時アシスタントをしている方が多かったので、アシスタントについての情報もリアルに聞けました。 

── アシスタントの情報!

はい、どれくらい大変かという話は聞きましたね。締め切りに追われるから、クオリティよりも間に合わせるほうが大事だとかは、ちらほら耳にしました。 

卒業するまで一緒に住んでいたメンバーとは、ネームの見せ合いとかしましたね。「描いたからみんな見て~」という感じで。 

── ネームはどんな風に見せ合っていたんですか?

自然とリビングに人が集まるタイミングがあるので、そのときにネームを持ってきて、見てもらっていました。 

── おお…!

3年間ほど住んで、周りにやる気がない人がいると、それに影響されて描けなくなっちゃう人を見てきました。でも今(卒業時)のメンバーはみんな描いてますね。 

あんまり描けていない子でも3~4か月に1本は作品を完成させているので、やっぱりやる気のある人は、すごいなと。自然とそれに引っ張られます。 

── トキワ荘プロジェクトのイベントにも入居者と来てくださったり……?

行ったりしましたね。入居してから最初の夏に、一緒に住んでいた連載中の方が表彰されるとなって、納涼祭にみんなで行きました。 

イベントではいろんな人と話ができるのが良くて、それ以降も何回か参加しました。 

── そうだったんですね!イベントでは、どんな話をされたんですか?

漫画について「今どんな進捗ですか?」とか、どこらへんの雑誌志望なのかだったり、そこって今どういう感じでルートがあるのかだったり、探り探りでしたが、かなり根掘り葉掘り聞いた感じですね。 

── イベントに参加してみて、いかがでしたか?

よかったです。やっぱり地元にいたら、できないことだったので。 

東京に足を踏み出したからこそ、同じ漫画家をめざす人がいる環境に身を置けたのだと思います。 

── トキワ荘プロジェクトに参加する前に、入居半年で作品2本を完成させるという目標があったと思いますが、達成できましたか?

はい、3本描いちゃって。 

── すごい!

もともとクオリティをあまり重視せずに、どれくらい早く描けるのかといった今の自分の実力が知りたかったんです。 

── 自分の限界ですね。

そうですね。この3本を描き上げたときの感触と、シェアハウスの人たちからの話を聞いて、3年でデビューするのはちょっと難しいかもなっていうのを感じました。 

だったらいっそのこと、入居してから3年の間は勉強しようと思ったんですよね。 

それ以降は、いろいろと試してみました。早さを重視して描いたらこうなるんだとか、じゃあクオリティを上げて描いてみたらこのくらいの時間がかかるんだとか。 

振り返ると自分の実力を把握するには、すごくいい時間だったかなと思います。 

── 分析って大事ですよね。

はい。結局、自分で描けることと描けないことがあるって気づけたのは、大きかったです。 

そもそもこの業界は、漫画が得意な人がトップを張っているシビアな世界なので、やっぱり自分の得意な物じゃないと通用しないなと思いました。 

── 自分の得意なものは見つけられましたか?

トキワ荘プロジェクトを卒業する直前、同人誌即売会に出すために描いた漫画を、イベントと並行して、自分でもwebで投稿できる出版社ほとんど全てにマンガを出してみたんです。 

そしたら、担当さんが3人も増えまして……。 

── 3人も!

だからたぶん、主人公に正義感があって、でも繊細でちょっとネガティブみたいなのが自分に描けるものなのかなと思いました。 

── 得意なものが見つかると、今後が楽しみですね!

これからは、自分の描ける雰囲気を大事にしてくれる方と一緒にやっていきたいなって思ってます。 

── 卒業生として、未来のプロジェクト参加者にアドバイスなどありますか?

見学のときには、住んでいる人たちに「どのくらいの間隔で投稿していますか?」とか「一番最近は、どれくらい前に投稿したか?」とかは、絶対聞いた方がいいと思います。 

半年~1年くらい掲載も投稿もしていないって方がいたら、他のメンバーたちもそれをそっと見守っていることになるので、そうなると雲行きが怪しいですよね。 

他人に引っ張られちゃうタイプの方は、特に気をつけたほうがいいかな……。 

── シェアハウスは、良くも悪くも他の人の影響を受けやすい環境ですよね。

やる気のある人をいれる努力は、きっと事務局の方もしていると思います。 

年ごとに契約を更新するシステムに代わってから、より漫画に対するやる気を問われるようになったと感じますし。 

── 恐縮です…。

悩んだときには周りの人にどういうアプローチの仕方があるか聞けるので、解決方法の選択肢がすごい広がると思います。 

一緒に住んでいる方が色々経験しているので、聞いたらすぐにアドバイスが返ってきて、答えが見つかる、なんてこともありました。 

漫画を描いているけど、地元には新幹線も通っていなくて、どこに行くにもめちゃくちゃ遠いっていう方は、もう東京に住んだ方が早いような気がします。 

こういうコミュニティにも所属できるので…! 

── 貴重なお話をありがとうございました!

2021年8月4日