編集長の部屋(7)後編 E★エブリスタ:池上真之社長-意識しているライバルは中国の巨大なサービスです。

編集長の部屋
2015.02.09

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前編: エブリスタはネット界の文芸誌みたいな位置付けで、漫画原作者を育てます。

中編: サービス開始4年で累計10億円位はクリエイターにお戻しできていると思います。

「編集長の部屋」コーナー7人目は、株式会社エブリスタ 代表取締役社長の池上真之さんです。E★エブリスタは、2010年6月にサービス開始した、携帯、スマホ、Web向けに小説やコミックを投稿できるコミュニティサイト(UGC)です。サービス開始から既に4年以上経ち、多くのユーザーを獲得し、多くの作家のデビューを支援しています。エブリスタ全体には編集長にあたる方はいないのですが、その代表として池上さんにお話をうかがいます。2010年からトキワ荘PJと一緒にお仕事をさせていただいており、池上さんとはそれ以来のご縁です。

 <E★エブリスタ―池上真之社長(後編)>

作家さん達は、自分がなぜその作品を作ったのかと言う事に、結構無自覚なんです。 

―― 池上さんはアイドルがお好きと言うことですが、この表紙にある星野みなみさんという方のチョイスは、やっぱり池上さんの趣味なんですか?

いや、趣味ではなくですね(苦笑)、エブリスタはみんながスターになれる場にしたいと申し上げたと思うのですが、ある時アイドル年鑑を見ていて、「星野みなみ」さんというアイドルがいらっしゃるのを知って「みんながほしに」なるということには最高ではないかということで決めました。(以前は、架空のキャラでホシミナミというキャラもいたのですが:笑)

 

―― 非常に説得力があって、ちょっと悔しいですね(笑)
―― 最近の池上さんは、主にどんな業務をされているのですか?

主に人と会っています。先ほどもちょっと申し上げましたが、エブリスタは東京ではあまり、ここまでの展開が出来ているとは知られてないのですね。この年鑑を作って、初めてみんなエブリスタがここまでの実績があると知ってもらえるようになりました。この本のおかげで、テレビ関係者などと、広報やアライアンスの仕事をしています。

個人的には、作家さんと会うことが好きで、良く会いに行っています。北海道や福岡にも年に一回は行きます。住んでいる作家さんに会いに行くなどしています。

 

―― それは(出張が)楽しそうですね(笑)

その人たちが、なぜその作品を作ったのかを聞くのが好きです。作家さん達は、自分がなぜその作品を作ったのかと言う事に、結構無自覚なんです。例えば、電子書籍大賞を取られた方にお話を聞きにいったところ、その方はその作品を作られる直前まで、精神的にも肉体的に大変ブラックな会社でずっと働いていて、大変な思いをしていたそうなんですね。最後には、そこでの苦労が花開いたりもしているのですが、実際にその受賞作品も同じような展開で、その人らしさが作品に滲み出ていたりするのです。

話している本人は、私から「どういう人生だったのですか?」みたいなことを聞かれる理由が最初は判らないようです。そのご本人と作品の関連に意外と気づいていないので、作家さんに「あなたの作品の良い所は、主人公が絶望的な状態でも諦めないことですよ。」などということに気づいてもらうというのが、凄く楽しいんです。

 

意識しているライバルは中国の巨大なサービスです。  

―― エブリスタの海外展開はいかがですか?

2015年は一応計画をしています。アジアが良いかなぁなどと。

 

―― 意識しているライバルはいますか?

今、中国は小説発の映像化が凄いです。起点」というゲーム会社が運営している小説投稿サイトがあるのですが、年間数十作品が映像化されていて、サイトのユーザー数は3000万人という状況らしいです。それ位にはなりたいなと考えています。

プラットフォームビジネスではありますが、単純に作品を販売するだけではないところを目指していきたいですね。

 

―― 今のエブリスタは、新しいユーザーを獲得していくためにはどんなことをしているのですか?

ヒット作を作る事だと思います。

例えば『復讐教室』というヒット作があるのですが、その作家さんは、エブリスタの『王様ゲーム』を読んで、自分も書きたいと思ったので書きはじめたのだそうです。ヒット作は良い作家を呼ぶので、結果的にユーザーを広げると思います。

 

ちなみに、やはりいまだに、紙の媒体は強いですね。『王様ゲーム』は、コミックや小説など、累計で660万部のヒットになりまして、単行本一冊で40万部が出たりするのですが、アプリやWebで1作品がそれを超えることはなかなか無いです。

fukushu

 ヒット作に続いたヒット作『復讐教室』

 

―― エブリスタには、新人賞にあたるものはありますか。

漫画ではないのですが、小説では1年に1回スマホ小説大賞というものをやっています。

そこに、色々な出版社さんなどが参加して下さって、例えばKADOKAWA賞とか集英社賞などという賞が出て、複数の本になったり、BS-TBS賞が出て、ラジオドラマになったりなどしました。『摂氏100℃の微熱』という作品は、読売テレビ賞で映像化しました。

他にも、ジュノンさんと、ジュノンボーイのホラー大賞をやってみたりとか、不定期イベントをちょくちょくやっています。

 

―― 看板作品は何になりますか?

やはり『王様ゲーム』と『奴隷区』が大きいですね。エブリスタ全体に大きな影響を与えている作品です。

 

売れる作家は、サービス精神旺盛で、ネットコミュニケーションに強い方です。  

―― エブリスタのようなプラットフォームでプロとして売れていく作家は、どんな人ですか?

芸術家気質と言うよりは、サービス精神が旺盛なほうが良いと思います。大島優子さんのような。

 

―― はい。

芸術家然としている人より「今ならこれも付けちゃいます!」みたいな方が、売れて行きますね。

 

―― それは、UGC(ユーザ投稿作品)ではコミュニケーション強者じゃないと生き残れないということでしょうか。

そうなのですけども、それはリアルでと言うよりは、ネットコミュニケーションに強いということが求められる感じですね。リアルのコミュニケーションが強くても、ネットでのコミュニケーションが弱いと上手く行かないです。「判る人だけ判れば良い」という時代ではなくなってきているのでしょうね。

 

―― エブリスタには編集方針のようなものはありますか?

ネットの特徴として、ヒットしたものが集まるので、「ホラー」と「恋愛もの」の作品ばかりになってしまうというところはあります。それを見て、敢えて少年漫画っぽい賞を作ったりすることもあります。

 

―― エブリスタに欲しい作家像と言うものはありますか?

今はともかく、キャラが描けて、ネットコミュニケーションに強い方が良いですね。サービス精神旺盛な人というか。

 

―― 逆にエブリスタで上手く行かない人のタイプはありますか?

やはり、ネットコミュニケーションが苦手な人でしょうか。。。

気難しいタイプの作家さんは、編集者さんにカバーされてやってきた面があると思うのです。UGCでは割と早い段階で公衆の面前に出ないといけないので、編集者さんと一対一で仕事をしている感覚で、濃密に作品を作るというタイプの方が、読者さんとトラブルになってしまうような現象が起こると、そのままどうにもならなくなったりしますね。

そういう意味では、セルフプロデュースが出来る人でないと、難しいのかも知れません。

 

―― 私もいつも楽しみにしているのですが、「イケガミコフの生存戦略」と言うユニークなBlogを書かれていますよね。アイドルがお好きなのですか?

はい。アイドルオタクというには本当にオタクな方に申し訳ないレベルなので、ファンと言うレベルだと思いますが、セルフプロデュースが求められている点など、UGCとの共通点も多いように勝手に感じてまして、アイドルの世界からは、いつも色々とヒントをいただいています。

 

―― このお仕事をされていて、影響を受けた作家さんはいらっしゃいますか?

最近、石田衣良さんから「エブリスタから直木賞出そう」と言われたことがとても嬉しかったですね。

 

編集長一押しの作品  

―― 池上さん一押しの作品を教えてください。

ウェルザードさんの『カラダ探し』です。

―― その作品のどんなところが素晴らしいですか?

次々とページをめくってしまう展開が続きます。
ゲーム性の高い設定はネット発ならでは。よく練られた設定が、物語をスピーディーに展開し、登場人物のキャラを浮き彫りにしています。
また、読者を恐怖させるだけでなく、感動もさせる作品です。
マンガアプリ『ジャンプ+』でランキング1位となって大人気のコミカライズ版は、先日2/4に単行本がジャンプコミックスから発売となりました。
マンガでも先を読むのが楽しみです。

 

―― 池上さん、ありがとうございました!

後編ここまで。

E★エブリスタホームページ

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インタビュー・ライティング:トキワ荘プロジェクト 菊池、番野

 

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